top of page
ザホワイトビレッジ

~Sueño Largo~
Singing: KOJI FUKUI
Guitar: ENRIQUE SAKAI
Piano (Guest): ANRI
Percussion:
 RAFAEL HEREDIA

 YOSUKE

Follow us /        
  • Facebook
  • Spotify
  • YouTube
  • Spotify
  • YouTube
About
nordwood-themes-KcsKWw77Ovw-unsplash.jpg

About /

物好きな人もいたものだ。というのは冗談で(笑)初めまして。このアルバムの歌を歌っております福井コウジです。

ほとんどの方は私のことをご存じないと思います。それもそのはず、18歳の時カンテ(フラメンコの歌)をはじめてからの15年間、もっぱらアフィシオナード(フラメンコ趣味人)として地下で、フラメンコの世界と関わってきました。現在はポップスの歌も趣味でやっていますが、カンテ歴15年目の節目を迎え自分のしてきたことを1つの形にまとめ区切りをつけるため、このアルバムを作りました。このアルバム発表をもって、フラメンコ歌手として引退します。


フラメンコを一言で説明することはとても難しい。辞書的説明はアンダルシア伝統民謡ですが、それではあまりにもシンプルだと私は思います。私の理解では『あるがままに』の美意識を極限まで追求した、超自然主義音楽です。よく聴いていると、歌い手の発声はアンダルシア人の喋り声とほとんど同じ。歌詞・ギターの曲調は、ポップスでは考えられないほど素朴。派手な音をつとめて避ける傾向にあります。たくさん音を使うギタリストもいますが、私の印象では、古典派の名人ほど少ない無骨な音を使う人が多いです。芸術とは作為ですから100%作為がないのはあり得ないのですが、他ジャンルと比べ『作為を感じさせない素朴さ』と『真実』をにおわせる自然主義音楽。それが、少なくともパコ・デ・ルシア登場以前の、フラメンコ音楽です。『真実』については、ポップスシンガーの一部にも真実を語る人はいます。だからフラメンコ独自の魅力とは言えませんが、『作為を感じさせない素朴さ』これはポップスと比べた際のフラメンコ独自の魅力と言えます。音楽を『音を美しく聞きやすくまとめる活動』と定義すれば、フラメンコは音楽ではありません。(これが全てではなく、ビセンテ・アミーゴのようにこれを音楽にしていく動きもあります。私はあちらも大好きです。)

ポップスと正反対の美意識のため、私自身がそうだったように『伝統フラメンコは聴きにくい』と感じる方がほとんどでしょうし、それが普通です。これは、現代の聴衆の耳がポップスに慣れているためです。私はポップスとも関わりがあるので、フラメンコでありつつ伝わるものがなんとか作れないかと試行錯誤しながら作りました。曲番が若いものほど聴きやすく、曲番が進むとフラメンコレベルが上がり聴きにくくなります。フラメンコ初心者で10番を最後まで聴ける人は、変態です(笑)

これまで私は、フラメンコの世界で生きてきました。しかし、だからと言って今後もフラメンコに縛られて生きていくことは考えていません。自分のしたいことがわからない若い頃、目の前にフラメンコがあった。また、うまくいかないことが多かった大学時代唯一救いを感じたのが師匠のエンリケ坂井氏で、彼の生き方に関心を持った。『音楽を習っていた』というより、『フラメンコという名の生き方に入信していた』と言った方が良い。だから、一生懸命やった。説教臭い人・すぐキレる人。一部の変な人たちに嫌な思いも何度もさせられたけど、師匠の顔を思い出すとつらいとは思わなかった。だんだんとカンテを大好きになったし、フラメンコ道に救いを感じた。

けれど、色々なものを吟味してその中からフラメンコを選んだわけではなかったから、だんだんと自分のしたいこととフラメンコとのギャップに苦しむようになった。私のしたいことは『分かる人に分かれば良い』ではなくて、もっと博愛的なことです。偽善に聞こえるのでしょうが、可能な限り多くの人を自分の活動を通じて幸せにできれば、と思っています。フラメンコの、真実の追求。それは良いけれども、良さが分かるのに何年もかかる表現方法。これが、しっくりこなかった。好きなカンテが普通の人たちに伝わらないことは、私にはとても悲しいことだった。商業主義に関心はないが、真実を人に伝えることには関心がある。だから、伝統派フラメンコと現代のスタイル、どちらにも共感するしまたどちらにも共感しない。それが、私だった。

そんな中、フラメンコ界の、すぐキレてしまう人や説教で周囲を困らせている人をあらためて目にした。また『日本人のお前にはスペインのカンテは歌えない』という偏見に満ちた人種差別もそれなりにあり、それはスペイン人からよりむしろ日本人からの方が過酷だった。そして、ある日『他の世界を見てみたい』そう思うようになった。フラメンコ界との今後の付き合い方は、今現在も考え中です。はっきり言って、フラメンコという表現形式ただ1つに忠誠心があるわけではない。しかし、古典派の人ほど私のそうしたあり方に良い顔をしない。良い人たちもいたけれど、相当問題のある人たちもそれなりにいた。だから、フラメンコの場に顔を出すことに相当なためらいを感じる。(まあ、そもそもが出不精であちこち顔を出す生活が合わなかったり、他にやりたいことがあるのも理由ですが)

 

とはいえ、これだけは確信しています。温かいフラメンコ人たちとの思い出は生涯の宝です。佐賀のスタジオ ”La Alegría”の樺澤ご夫妻。故郷広島のフラメンコ仲間たち。恩師ホセ・デ・ラ・トマサ。レブリハの大歌手イネス・バカン。そして、このアルバムの共演者全員。彼らは僕をいつも励まし勇気づけ、そして本当に優しかった。彼らこそ、フラメンコの華。フラメンコの美。良い人ばかりではない暗い側面もあるフラメンコ界で、彼らは凛として光りフラメンコの未来を照らします。彼らとの友情はこれからも変わりませんし、今後は主に客席から彼らを応援したいです。

光り輝くアンダルシア・陽気な人々・くったくなく私と接してくれる大物たち。僕がスペインで見たものをもしお話ししても、ほとんどの方は信じないでしょう。私自身、スペインでのあのころを思い出すと、まるで長い夢 (Sueño Largo) を見ていたような。1人の人間でありながら、2つの人生を生きたような。そんな気がします。

 

最後に、杏梨女史、ラファエル・エレディア氏、容昌氏、ドン・エンリケ坂井氏。4人の共演者にあらためてお礼申し上げます。このアルバムを、彼らのような温かい真のフラメンコ人たちに、そしてこのアルバムにふと関心を持った市井の方々に捧げます。

 

フラメンコの世界が、真のフラメンコ人らによって未来永劫眩く輝かんことを。

Koji Fukui

 

 

このアルバムは魂からカンテを愛した福井コウジが歩んだ、その道半ばの軌跡を刻んだものだ。カンテには本来プロもアマもない。プロは人前に立って歌いギャラを受け取るからそれ相応の技術と責任がある。しかし、それによってある種の純粋さを失うことも多い。

この録音は福井コウジの純粋さ、情熱によって成り立っている。足りない部分は当然あるだろう。しかし、カンテにとっていちばん大切なもの、アフィシオン(歌を愛する感情)が溢れていて、あらためて何が大切かということを訴えているかのようだ。

もしこのまま歌い続ければ、きっとカンテの方が彼に近づいていくだろう。

Enrique Sakai

ビーチで
Artists

Artists /

200807_223_2.jpg

福井コウジ

広島県出身。歌手。慶應義塾大学卒。母は元三味線奏者。...

200807_206_2.jpg

エンリケ坂井

フラメンコギタリスト

岐阜県出身。フラメンコギタリスト。16才よりフラメンコギターを志し...

151602632_865871127570960_34164647450750

ラファエル・エレディア

パーカッショニスト

広島出身 父がフラメンコパーカッショニストの影響で幼い頃から...

151284074_177809623832432_68638494640349

容昌

パーカッショニスト

米ボストン、バークリー音楽大学卒業。 在学中「Outstanding Percussionist Award」を...

146269202_741960866424444_88738200331732

野口杏梨

ピアニスト(ゲスト)

野口杏梨 ピアニスト。東京音楽大学付属高等学校、同大学器楽科 ピアノ専攻卒業。...

Video
nordwood-themes-KcsKWw77Ovw-unsplash.jpg

Latest Video /

bottom of page